14 December

来年に向けての反省や仕込みを行う12月

一年を振り返って

12月に入り、今年も残り僅かとなりましたね。皆さんにとって、この1年はいかがでしたか?
農業の世界では、今年もまた天候不良に悩まされる一年だったと思います。今年は、短い夏と長い秋で、秋冬野菜の収穫が前倒しになったり、例年とは違う病気が発生したり、知り合いの農家の間で慌ただしく情報が駆け巡りました。作物の出来については、千葉市では落花生が不作な一方、ダイコンがどの農家もよく出来たようです。定植時期が遅れて、例年であれば結球を諦めていたハクサイが無事結球する一方、年が明けてから収穫する予定だったカリフラワーが11月に収穫できてしまいました。

大根

大根

収穫が早まったカリフラワー

収穫が早まったカリフラワー

収穫が早まったロマネスコ

収穫が早まったロマネスコ

全ての野菜にとって都合の良い気候はなく、全ての野菜にとって都合が悪い気候もなく、自然は実によく出来ているものだと思います。
農業実践教室は、おかげさまで今年も一年を通じて、美味しい野菜をたくさん収穫できました。今年は、例年通りの栽培を続ける傍ら、一部で新しい知識や技術を取り入れた実験を行いました。今年特に力を入れて試行錯誤したのは、今さらながらですが、肥料の量、そして食酢や納豆菌、酵母菌等の野菜づくりへの活用です。
たとえば、肥料の量は、多すぎると虫害被害を引き起こしやすいゆえ、有機栽培では「肥料の量は迷ったら少なめに」が鉄則です。しかし、今年は実験的に肥料の量をうんと増やしてみました。その結果を見ると、圧倒的にひどい虫害を受けるものもあれば、そうでもないものもあり、また、野菜によっては、品種による味の違いがこれまで以上にはっきりと感じられるものがあったり、改めて学べることが多くありました。
また、肥料の多さゆえに虫害も発生したので、その対応策も色々と試してみました。これについては、効果が出たと思えた対応は少なく、どちらかといえば効果を殆ど感じられなかったものや、効果どころか極端なことをやり過ぎて根や葉を傷めたこともありました。
うまく結果が出ない時、発明王エジソンのこんな言葉が頭をよぎります。
「私は失敗したことがない。ただ、1万通りのうまく行かない方法を見つけただけだ。」
エジソンは、こうも言っています。
「私たちの最大の弱点は諦めることにある。成功するのに最も確実な方法は、常にもう一回だけ試してみることだ。」
エジソンの言葉を胸に、来年もまた、成功したと実感するまで色々な実験を畑で繰り返していこうと思います。

12月は堆肥づくりを楽しみましょう

落ち葉拾い

落ち葉拾い

落ち葉

落ち葉

12月は、落ち葉が舞う季節。堆肥を作るのに一番良い季節です。
堆肥は、有機物を発酵させて作った資材です。有機栽培で野菜を作る場合、一般的にはこの堆肥と肥料を入れます。
肥料と堆肥は似て非なるものです。一言で違いを言うと、肥料は野菜の生育そのものに直接関係する養分として畑に入れるもの、堆肥は、野菜が育つ土台となる「土」を良い状態にするために入れるものです。
土が「良い状態」にあるというのは、「物理性」「化学性」「微生物性」の3つの観点で良い状態にあるということです。物理性では、水はけが良く、かつ水持ちが良い状態であること、化学性では、野菜の生育に必要な養分が適切な量、適切なバランスで含まれていること、微生物性では、野菜の生育にとって有用な微生物がバランス良く生息していること、が求められます。

堆肥は、落ち葉や野菜くず(残渣と言います)、微生物のエサになる米ぬか等窒素を含む資材があれば簡単に作れます。米ぬかが手に入らない場合は、身近な窒素肥料(発酵鶏糞や牛糞、油粕肥料)でも構いません。
作り方はシンプルです。
堆肥の原料となる落ち葉や野菜くず、米ぬかを万遍なく混ぜて積み上げます。水分量が発酵の最大のポイントで、水分が多すぎると腐敗します。ですから、堆肥は、雨が入りにくい場所で作るか、ビニールで覆っておきましょう。
家庭で出る生ごみを処理できる「生ゴミ堆肥」に興味を持つ方が多いかもしれませんが、生ごみを中心にして堆肥を作ろうとすると、水分が多すぎるので失敗しやすいです。生ゴミ堆肥を作るのであれば、必ず乾いた落ち葉等を生ごみの量以上に入れましょう。
堆肥が順調に発酵しているかどうかを見分けるポイントは2つあります。
1つ目のポイントは、温度です。順調に発酵していれば、積み込んで2~3日後には内部の温度は50~60度まで上がっています(量が少なかったり、寒い日には温度が上がりにくいです)。

堆肥材料の積み込み

堆肥材料の積み込み

発酵し始めた堆肥

発酵し始めた堆肥

発酵して温度が上がっている堆肥

発酵して温度が上がっている堆肥

積み込んだ堆肥の撹拌

積み込んだ堆肥の撹拌

2つ目のポイントは、匂いです。腐敗をしていると生理的に不快なドブ臭がしますが、順調に発酵が始まっていれば、香ばしい匂いがします。
無事発酵がスタートしても、堆肥の温度が上がり過ぎて62度を超えると、発酵に関わる微生物の多くが死んでしまうので、温度を上げ過ぎないよう注意しましょう。最適温度は、50~60度です。温度が高過ぎるようであれば、堆肥を広げて表面積を増やすことで堆肥の温度を下げます。

使える状態になっている堆肥

使える状態になっている堆肥

堆肥は、積み込んだ中身が土のようになっていれば完成です。
家庭菜園での堆肥づくりは、完成まで半年~1年ほどかかります(手入れの仕方によって完成までの日数が大きく変わります)。発酵中の堆肥の様子を時々観察してみるのもまた楽しいものですよ。

12月は、野菜の甘味を堪能しましょう

本格的に寒くなってくると甘いものが恋しくなる、という方は多いのではないでしょうか。
そんな真冬にお勧めするのは、焼き芋です。
バーベキューができるようなお庭がある方は、バーベキューコンロを使って炭焼きでじっくりとサツマイモを焼いてみましょう。甘くて美味しい焼き芋を楽しめます。
焼き芋は簡単です。炭火を起こしたら、よく洗った芋を濡れた新聞紙に包み、さらにそれをアルミホイルでしっかり包んで、ホイルごと30~60分程度かけて焼くだけです。
サツマイモは、熱を加えるとβアミラーゼという酵素が働き、デンプンが分解されて麦芽糖(マルトース)に変化するため、甘くなります。特に、イモの内部温度が65~75度を保つ程度に加熱されると、ゆっくりとしかし最も効果的にβアミラーゼが作用してきます。
炭焼きや石焼きでの焼き芋がふかし芋に比べてとても甘いのは、長い時間をかけてこの温度帯を通過するためです。

安納芋

安納芋

バーベキューコンロで炭焼きイモ

バーベキューコンロで炭焼きイモ

焼き芋

焼き芋

生姜鍋

生姜鍋

また、12月は野菜の甘味が増す時期でもあります。野菜の甘味を堪能しながら身体も温まる「生姜鍋」もご紹介しましょう。
生姜鍋は、出汁にたっぷりの生姜を入れた鍋です。
生姜は、ジンゲオールやショウガオールという辛味成分に体を温める働きがあります。ジンゲオールは、生の生姜の皮の近くにたくさんある成分です。ショウガオールの方が体を温める作用は強いのですが、加熱するとジンゲオールはショウガオールに変化します。ですから、寒い冬に皮ごとスライスした生姜をたっぷり入れた温かい鍋を食べることは、理にかなっているのです。
生姜鍋は、出汁が決め手です。生姜の存在感に負けないよう、昆布とカツオの旨味がしっかり出た出汁をとり、料理酒と塩、濃口醤油でベースを作ります。鍋に入れる肉は、鶏もものひき肉の団子がよく合います。もちろん、団子にも生姜をたっぷり入れましょう。
12月に入ってから収穫した長ネギや白菜は、煮込むとうっとりするほどの甘味を引き出せますので、最初から鍋に入れてじっくりと煮込むと良いでしょう。

さて、お庭と食卓の連載は、今回で最後です。一年間、お付き合いくださりありがとうございました!